道玄坂上

会社のえらい人に、渋谷のとあるオフィスまで出かけてもらうことになった。
お付きが不要というのはありがたいが、なにぶんそこには自分も行ったことがない。
なので、ちょっと下見に道玄坂を歩いてきた。

渋谷駅前からつづく人波も、道玄坂を登り切るころにはだいぶ減る。
誰かにぶつからずには歩けないような混雑ぶりに変に気が張って、私の昭和スイッチどころか写真スイッチも入らなかったが、道玄坂上の交差点を過ぎて、この看板たちを見つけたところで復活。
塗料系ばかりの看板。
書体にほのかに昭和が香る。
通りはすぐに首都高にぶつかる。
交差点を渡って南平台あたりを歩くにはちょっと余裕もなかったので、今日はここでUターン。
首都高沿いにそびえる巨大な渋谷ソラスタビルの前に、こじんまりしたビル。一階には小洒落たお店が入っていたりするのが今風だなあ…
ソラスタビルの反対側の角を曲がり、道玄坂方向に戻る。
こういう形のビルの角に弱いんだよなあ、
隅切りになっているだけで店構えが格段によく見えるんだよなあ、
とオイスターバーを写真に収めたところで、そのすぐ隣の極小店舗に気づく。
んん?
「蛇の健」
… くちなわのケン、とでも読むのだろうか。
あれだ、風車の弥七とかかげろうお銀とか、時代劇に出てくるタイプの。
いったいこのお店の大将はどんな人なのか…
しかも、飲食店の名前に「蛇」という漢字を持ってくるとはなかなか大胆。
ふたたび道玄坂。
交番向かいの三角地に建つ理髪店。
来た道を単純に戻るのもなんなので、一本だけ脇に入ってみた。
マークシティ裏の通り。
渋谷の谷底へ。
渋谷駅前のフレッシュオーワダ。
何十年と変わらない佇まい。
この巨大ターミナルでこういう昔ながらのお店を見るとほっとする。
綺麗で新しくて大きくて、そんなものに目を奪われがちだった若い頃。どれほどのものを見落としてきたことだろう。

東京寫眞帖

東京風景。 昭和の名残、ときどき現代。

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