露伴先生の旧宅あたり

植物園に思いがけず長居をしてしまったので、この後どうするかな… と近所をうろうろ。
文京区というと、高級マンションの立ち並ぶ様子を勝手にイメージしていたけれど、意外と民家が多く残っている。隠れ鬼をしてあそぶ子どもたちの声が通りに響く。
お昼を食べていなかったことを思い出した。
ついでに、ずっと歩きっぱなしだったので少し座りたくなってきた。
ということで、いちどは通り過ぎたお店に逆戻り。
米粉のおやつの「Karuna」さん。
店頭に並んだマフィンを前に大長考。
黒ごまあんこのマフィンとコーヒーをいただくことに。
あんこたっぷり、豆たっぷりの大きなマフィン。米粉だからかへんな油っこさもなく、最後までおいしくいただけた。
以前は習字教室だったというお店は畳敷きで、座布団に座って表を眺めながらお茶とお菓子をいただいていると、なんだか落ち着いた気分になる。
夕方になってランプに灯りがともされ、いっそう雰囲気が出て、なかなか立ち去りがたい。
さてこの後はどうするか… 
ここまで来たのなら、露伴先生の小石川の家まで行ってみようか。伝通院の近くなのは知っているのだけれど、道がよくわからない。地図を取り出しスマホをいじり、うーん? と考えていると、親切な店主が一緒に地図を見てくれた。おかげでどうやら見当がついた。

Karunaさんを出ると、街は薄明かりの中。
まずは千川通りまで。
信号待ちしながら、剥げ落ちたロゴの文字を読む。牛乳はすぐにわかるけど、十字マークの左側はなんだろう… 保証? 牛乳に保証とは、耳慣れない言葉の組合せだ。
千川通りを柳町小入口の信号で、右手の細道に入る。ここをまっすぐ行って、突き当りが善光寺坂。
善光寺坂を登っていくと、やがて大きな椋の木が見えてきた。
注連縄を張られた椋の木。
400年もここにいる。
400年前といったら江戸時代の初め。
それから今まで、大火も震災も戦争もあったのによく生き残ってきたものだ。注連縄を張る気持ちもわかる。

坂を下りながら考える。
そういえばここ何年も露伴先生の文章を読んでいない。いやしかし、今日は小石川植物園に行ったことだし、泉鏡花では?
善光寺坂をおりて春日駅に向かう途中の商店街。
「亜」の旧字体ってバランス取りづらくて書きにくいよなあ… などと思いつつ通過。
白山通りに出て春日駅の入口を見つけたところで、通りの向こう、マクドナルドが目に入った。
Karunaさんの店主が、マクドナルド脇の道を入ると樋口一葉の働いていたお店に出ますよ、と言っていたのを思い出した。
どうしますかね。
もう完全に日没後で、薄暗くなってきている。
…やっぱり行きますか。
ここまで来たんだし、あともう少しだし。
伊勢屋質店。
菊坂の途中にぽっかりと旧時代が顔を覗かせる。
これは個人のお宅かと思うのだけど、今では珍しくなった板張りの壁。
菊坂脇の路地。
坂のひとつとなりの道は民家の密集する谷底のような細道で、このあたりが一葉さんの旧宅跡らしく、古い井戸もあった。
井戸は昔、怪奇写真を撮ってしまったことがトラウマになっていて夕暮れ時に写真を撮るのは怖いので、見るだけに。
一葉さんの文章は前に少し読んだことがあるけれど、あれは気力のある時でないと読みこなせない。もはやすっかりお蔵入りである。
さてさて、露伴先生、泉鏡花、一葉さん… どれから読もう。

おまけ。
壱岐坂から水道橋に出る途中。

東京寫眞帖

東京風景。 昭和の名残、ときどき現代。

2コメント

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  • まゆり

    2019.05.06 05:32

    そうですよね〜 わたしもひと気のない菊坂・壱岐坂と歩いてきたので、ドーム近辺の賑わいの中に出てきた時、人がいる! と安心しました (^-^; 写真は自分の目で見たようには映らないもので、もっとぼやーっと暗い感じだったんですよね。だから余計に現代の明かり… という感じがしました。
  • 2019.05.06 02:38

    ドームの画像は、タイムマシンが一気に「今」に引き戻された感覚に陥ります。