今年の桜も今週末で見納めだろう、
そう思ったら家にいるのがもったいなくなって、電車に乗って多摩川駅へ。
駅を出てまずはすぐ目の前の浅間神社へ。
今日は花見がてら訪れる人が多いようで、境内はたくさんの人で賑わっていた。
境内の川沿いには見晴台があって、ここから眺める多摩川の景色は大好き。
冬の空気の冷たい頃なら、真正面に遠い富士の山が見えるけれど、今日は春らしく薄ぼんやりと霞んでいる。
それもまた良し。
神社のある小高い丘をいったん降りて、駅方向に戻る。
駅前の和菓子屋さんで鮎焼きをひとつ買う。
出来たてのほかほかした鮎焼きをかじりながら、多摩川台公園の急な坂を登る。
園内はそぞろ歩きの人でいっぱいで、子供たちの歓声が響きわたる。
見上げる空は青く、目をどこに転じても桜、桜、桜。
明るい気分だ。
自分もまた、園内を足の向くままに歩く。
公園は多摩川の河岸段丘上にあって、小さな古墳がいくつもつらなっている場所なので、園内には古墳展示室がある。
そこの展示物なんてなんども見ているのに、この公園に来ると必ず立ち寄ってしまうのはどういうわけなんだろうなあ…
で、今回も例によって展示室で相変わらずの展示物を見て出てきたら、なんだか小腹が空いたような気がして、予定外ながらたこ焼きとハイボールを購入に及ぶ。
さてどこかに腰を落ち着けねばならぬ… とうろうろしていると、ちょうどベンチを立つ人がいた。やれ、ありがたい。入れ替わりに腰を下ろしてふと目を上げると。
なかなかの絶景。
多摩川のゆるく湾曲する流れ、中洲の木立、対岸の桜並木。
こちら側の川岸には野球グランドがあって、時々、カキーン、と高い音がする。
たこ焼きをひとつ口に放り込んではハイボールをちびりちびりと飲み、持ってきた本をめくっているうちに日が傾いてきて、首すじを過ぎる風が少し冷たくなったように感じた。
そろそろお花見も潮時か。
虹橋。
優雅な名前の小さな橋の上には、虹ならぬ桜の花が、たなびく雲のように掛かっていた。
虹橋をわたった先の広場を抜けるとそこはこの公園の北端・宝莱山古墳で、ひっそりと人もなく、静かに風が吹き抜けていた。
斜面に咲く山吹に誘われるように古墳を登り、反対側へと降りながら思う。
この古墳群に眠る人たちは、幸せといえるかもしれない。毎年毎年美しく花が咲き、たくさんの人が集い、飲んで食べて笑って。ここに眠る自分のことを誰一人知らないとしても、こうして楽しげな人々の姿を見ることができる。それは、遠い時間の彼方に埋もれてしまった人たちにとって、なんらかの慰めになるのではないかと。
夕暮れの陽射しが呼び起こす、過ぎた感傷だ。
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