お稽古が終わる頃には雨も上がっていた。
空の灰色具合はいささか不穏だけれど、予定通り、近所を探索することに。
お稽古場を出て少し南に歩くと、いい感じに道がくだって神田川に出る。川ぞいの柵から覗き込む。川面はかなり遠い。
ぷらぷら歩いていくと、対岸でスマホのカメラを構えている青年を発見。
なにを撮っているんだろう… と視線の先を追うと。
ん? んん?
きらきら輝く鯉がすーっと泳いでいく。
こんなに距離があるのに、こんなに大きく見えるなんて、いったいどれほどの大きさなんだろう。
よく見ると、けっこうな大きさの鯉が何匹も…
なんだか艦隊が展開しているかのよう。
神田川を渡ると、甲州街道に向かって道はまたゆるく上り坂に。
坂道は好き。
後ろから自転車の中学生がふたり、なにかアニメソングみたいなものを大声で歌いながら、追い越していく。
狭い坂を上ると甲州街道に出る。
頭上を高速道路に塞がれて、こんな曇り空の日にはすこし圧迫感を覚える。
道路のむこうに桜上水の商店街の入り口が覗く。
巨大な高速道路と対照的な、こじんまりとし桜上水の商店街。
すぐに京王線の桜上水駅に着いてしまう。
歩き足りない。
とりあえず、京王線の踏切をこえて、どこまで行ってみようかな… と考え考え歩く。
道はまたかるく上り坂。
上りきると、はるかむこうまでまっすぐに続く荒玉水道道路。
予定では桜上水までのつもりだったので、あまりこのあたりの地図を頭に入れてこなかった。
なにか面白そうな場所はあったかな?
北沢川の源流が近いような気がするけど場所はうろ覚えだし、烏山川の緑道はだいぶ離れてるはずだし… もうちょっと歩きたいけど、さてどうしよう。
とりあえず駅まで戻って、駅前のY字路をぱちり。
が。
この駅前に戻るところで見つけたのですよ。
すすす… と問題の地点まで戻る。
白壁のおしゃれなパン屋さんのすぐ脇の路地を覗き込むと。
…ほほう。
パン屋さんの店先から、道路の反対側も覗き込む。
柵の向こうは微妙に道が下って、細く曲がりくねった道が…
うん、これはたぶん暗渠。
もし暗渠じゃなくても雰囲気ありそうなのでそれで良し。
ということで、パン屋さんの反対側の道に分け入ってみる。
マンホールに導かれて、緩く蛇行した道をてくてく。
道はわりとすぐに終わってしまったけれど、ひと様の家の裏庭っぽい感じとか、ドクダミの花が咲いているうっすらとした湿り気とか、暗渠感を楽しんだ。
(帰宅後、地図を確かめたら、開渠になっていた… 歩いた感じでは暗渠になってからだいぶ経っていそうだったけどなあ)
暗渠を楽しんだのはよいが、ここから先どう歩いたらどこに出るのか分からない。
もちろんググればいいのだけれど、それは知らない街を歩く楽しみを削いでしまうので、最終手段。
まあそのうち、大きな通りとかバス停とかを見つけるかもしれない。それまでに雨が降らなければいいな… と思いつつ、ぷらぷら歩く。
暗渠の終点から松原高校の脇をぐるりと回る。
と、…おや。
なんだか人通りが増えてきた。
さっきからずっと人の気配のしない道、しかも初めての道を歩いていたので、ほっとする。
街路灯のプレートに目をやると「日大通り」との表示。
学生街かな?
日大通りの終点は下高井戸駅だった。
駅前の踏切の向こうには、昭和な商店街が。
自分の住んでいる街にも、少し前までこんな感じの商店街があった。
狭い敷地に八百屋さん、和菓子屋さん、花屋さん、お寿司屋さん、髪結さんのお店… と小さなお店がひしめいていた。
今はタワーマンションになってしまい、かろうじて一階に八百屋さんとお寿司屋さんが入っているけれど、雰囲気はすっかり変わってしまった。
なつかしい気持ちで、下高井戸の駅前市場をのぞき、あたりを歩いてみる。
なんとこんな建物も残っていた。
街歩きの最後に思いがけずこういう建物に出会えて嬉しい。
ということで、満足して世田谷線に乗り込んで帰路につく。
当たり前のことだけれど、地図に書かれてあるどの街にもいろんな人たちが住んでいて、勉強したら働いたり、毎日毎日、生活しているんだよなあ…
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